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 それから色々とごねごねすること数時間。何をごねごねしたかは言わないけれど、いや、言えないけれど。

「――――すぅ、――――すぅ」

 セイバーはすっかり泣き止んで、気を落ち着けたようで。今はこうして同じ布団の中、俺の腕を枕にして穏やかな寝息をたてている。

「――――」

 噛まれていない方の耳を下にして、顔を横に向けてセイバーを見る。
 表情も寝息と同じく穏やかで、目尻にうっすらと残る涙の後や、仄かに朱に染まっている頬が少し気になるが、これは健康体である証拠みたいなものなので気にしないでも大丈夫、だと思う。というか腰痛い。

「元気だなぁ……」

 あれだけやって尚、ピン、と一房だけ己の存在を誇示するように立つセイバーの前髪。それを指先でなんとなくつつきながら、ぼそり、と呟く。
 前髪は――遠坂曰くアホ毛、はどれだけつついても弾いても直ぐに元の形に戻る。
 それが何だか面白くって、ネコじゃらしで遊ぶ猫ってこんな気持ちなのかな、などと想いながら先をつまんでくいくい引っ張ってみると、流石に不快感を感じたのかセイバーが「うっ」と唸った。

「おっ、と」 

 慌てて手を引っ込める。
 小さな声で、ごめんな、と謝っていると、セイバーが続けて「――――ん、シロゥ、……そんなにいじわるしないでくささい」と、何だかついさっき聞いたことのあるような台詞を寝言で呟きなさった。

「…………」

 ……顔が赤くなっていくのが分る。
 熱い。卑怯だ。

「……本当は起きているんじゃないのか、セイバー?」

 続けてなにやら「ん、ぁは」と妙に熱っぽい寝言――本当に寝言か――を呟きだしたセイバーの寝顔に小さな声で問うが、勿論返事はない。
 セイバーは「……シロウ……私達、の、赤ん坊……」と、ちょっと洒落じゃ済まされないような、というかどんなユメを見ていらっしゃるんですか、と思うような色んな人の憤怒した顔、主に遠坂とか桜とか藤ねえとかイリヤとかが脳裏に浮かんでくるような寝言を呟いてもじもじと体を動かしておなかを摩るだけ――――って、え?

「えーと……」 

 お前ホームラン打ったのか、と己の胸と愚息に問うが、これまた返事はない。

「――――」

 その後しばし思案すること数十秒。と、いつまでもこうやって嬉しいやら恥ずかしいやらの幸せ気分に浸っているわけにもいかない。窓から差し込む陽光は既に夕暮れを告げるその色に変って、遠くからは烏の鳴声や児童たちに帰宅を促す町内放送などが聞こえてくる。

「さて、と」

 布団を捲り、自分の体を引き抜いて、けれどセイバーの体は外気に触れないようにしようとして――――視線が固定されることまた数十秒。目の保養と血液の消失と集中をしこたま行ってから立ち上がる。
 さて、今日は餃子にでもしようか――――



 

おしまい




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