最近気がついたことなのだけれど、セイバーは王という役割ゆえに、常にたくさんの部下に囲まれて生活していた所為か、一人きりになるのを嫌う――というかずばり言えば寂しがりやさんだ。それもかなりの。 それがどれくらいのものか、というと、今こうやって二人でテレビを見るときも、足を投げ出して座っている俺の股の間に腰を下ろして、俺の身体を背もたれにしてぴたりと密着してくるぐらい――ってこれは何だか拙いですよ?
「あの、セイバー……? 悪いんだけどさ、このままじゃ見難い――」
いつも努めて意識しないように、と自分に言い聞かせるのだけれど、そんなものこの良い匂いとやわらかい感触の前にはなんら効果はない。
テントの設営――なんつー表現だ――をはじめる下半身の血液部隊を理性をもってして全力で食い止めながら、何とかセイバーに離れてもらおうと声を掛ける。
のだけれど、これまたいつもどおりで、
「――から、どい」
「嫌です」
言い切る前に強い口調でぴしゃりと拒否されてしまう。
しかも嫌だというやいなや、体重をかけてもたれかかる力を強めた上に、腰やら背中を俺の身体に擦り付けるように押し付けてき、腕を後ろに回して俺の手首を掴み、それをそのまま前に持ってきて、ジェットコースターの安全レバーかシートベルトかのように腰の前で組んで固定する始末。
アホ毛――と言うと凄く怒る、前髪から飛び出した人房の髪の毛を、ぴんと垂直に伸ばしているところからも絶対に離れませんという意思が伝わってくる。
俺は視界一杯に広がった砂金の髪から醸される良い匂いやら、白く滑らかなうなじとか、身体の前面にくまなく感じる温かさや柔らかさに馬鹿みたいに心臓をばくばくいわせながら――なんでこう毎回同じ轍を踏むのか判らない……というか、俺のこういう性格は一生直らないとどこかで諦めてる、いや、もうこうなったら行っちゃえばいいんじゃねーか衛宮士郎まだまだ若いぜ――って何を考えていますか俺は……っ!?
「ちょっ、セイバー……拙いって」
セイバーの身体の前に無理やり組まされて、手首を押さえらている腕を振りほどこうとして――って、ぴくりとも動きません。
しかも心なしかセイバーの肩が震えているような気がするのは気のせいであろうか。
「――――」
無言で腕に力を篭めるセイバー。
やばい、何がやばいか判らないがとにかく嫌な予感がする。
背筋を冷たく、嫌な汗が伝う。
――――と、ふいにその手が離された。
すると、俺がそれに躊躇う暇もない。腕の中に居たセイバーが腰を捻り、首を回転させて身体を俺向きに入れ替える。
そのまま手をネコの手のように丸め、俺の両肩に置き、顎を胸板に乗せるようにくっつけ、そこから俺を上目遣いに見つめて――――
「――――シロウ。……シロウは私とこうしているのが嫌なのですか」
ぼそぼそと、母親に叱られた子供のように心細い声で呟いて、その口を小さく開けた表情のまま、頬を僅かに染めて瞳を潤ませる、なんていう反則技をかましてくれやがりました――――
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