「ほら、セイバー、もう泣くな」 俺は布団から上半身を起し、丁度向かい合う形で俺の布団の上にちょこん、と女の子すわりして、泣き、謝り続けるセイバーをなだめ――って、何だか本来は立場逆だろって感じがするけれど、そこはまぁ気にしないでおこう。うん。 「えっく、……はい……」 両の袖で目元をぐしぐしと擦りながらこくんと頷くセイバー。 「ぁ――――」 いくらなんでも、子ども扱いしないで下さい。と怒られるかと思ったが、セイバーは気持ち良さそうに目を伏せて――というか何だ。セイバーはそりゃあもう美人――可愛い。勿論今みたいな泣き顔、もだ。 「し、士郎……」 さすがにコレは恥ずかしかったのか、セイバーは、はっと目を見開いて抗議の声をあげる。 「ほら、チーンして」 撫でていた手で頭を固定して、ティッシュ越しに右手でセイバーの小さい、綺麗な形の鼻をつまむ。そして鼻をかむように促す。これはいくらなんでも怒られるかと危惧したが――実際セイバーは俺の腕に手をかけ、顔を真っ赤にし、潤んだ上目遣いで俺を暫く睨みつけていたのだが――十幾秒かの思案ののち、 「……はい。シロウ」 消え入りそうな声で肯定して、ちーん、と鼻をかんだ。 ティッシュの片づけをしていると、くいくい、と服の裾を引っ張られた。 「どうした? セイバー」 そこに居るのは勿論セイバー。 「セイバー、悪か――――」 謝罪の言葉は、そのセイバーの声によって遮られた。 「――――セイバー……? どうし――――」 二度。またも遮られる言葉。 「――――」 口を噤む。 「……シロウ」 三度。俺の名前が呼ばれる。 「本当に……本当に、怒ってないのですか?」 少し赤みがかった目でしっかりと俺の目を見据え、問うセイバー。表情も声音も不安気。そこには、もし俺がまだ怒っているような場合、たとえこの身に変えても償い、贖いを――――という決意が込められているのが判る。 「――――っ」 知らず、息を呑む。 「あぁ、本当に……本当に、怒ってないよ」 セイバーは安堵したのか、小さく息を吐くと――何故か、また顔を俯けた。 「――――言葉だけでは」 したのか、と考えたところで、セイバーが小さな声で呟いた。 「え――――」 突然のことに吃驚して、暫し呆ける。 「こ、言葉だけだけでは、し、信じられません。 ――――ぎゅっ、としてください。 と。 ――――わたしを安心させてください、シロウ。 俺の胸に顔を埋めるようにしてしなだれかかってき、身を任せた。 もはや俺という目標を骨抜きにして正しい思考をさせないよう、そのためだけに特化された破壊兵器――――
――――ぎゅっ
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