――――サーヴァントの顎の力ってすごいよね。 食い千切られなかっただけ幸運、と思うしかない。 はむ……はむ……ガリッ! 『うぎょぅあっおぉぉぉぉ―――――っ!!??』 俺は寝ぼけて耳をはむはむガリガリしてくれたセイバーや近くに立っていた藤ねえをふっとばし、耳から血をぴゅーぴゅー噴出させながら走り回った。 『ぶべらっ!?』 走って、涙で滲んだ視界。 そういうわけで、現在俺の耳に雪だるまみたいに包帯をぐるぐる巻き、自室まで運んで横にさせてくれ、額に氷嚢をあててくれたのはそのどちらかということになるのだが、それはこの仕事の雑さから考えるからに言うまでもなく―――― 「――うっ、えっく……、シロゥ、ずびば、ぜん――」 紅潮し、涙と鼻水やらで端整で可愛らしい顔をくしゃくしゃにした、最近やたらさびしんぼうで甘えんぼう。耳をはむはむガリガリしてくれた張本人。俺の布団にしがみつき、先ほどからずっとすみませんごめんなさいと――寝ぼけてやったことだから俺は全然気にしていないのに――謝りつづけている、 「セイバー、俺は大丈夫だから……その、そんな顔しないでくれ、正直どうしていいかよく判らない」 ――――剣で相手を倒すことは得意、一流の剣士だけれど、衛生兵としては実は三流だったセイバーだったりする。 |