片手を突き出して、咄嗟に彼女の名を呼んだ。
そのときこの身を支配していたのは、何と呼ぶ感情だったか。
怒りなのか。心配なのか。後悔なのか。焦りなのか。悲哀なのか。慄然なのか。
ライダーを助けようとしたのか、助けたかったのか、俺に何が出来るのか、出来たのか。
判らない。
判ろうとすることもできない。いや、したくない。
「――――――――」
だん、だん。ごろん、と。
大きな弧を描いて飛び、舞い、落ち。俺の足元まで転がってきたのは、ライダーの頭部――いや、先ほどまでライダーだったものの、一部。
「――――――――」
僅か数時間の付き合いの中で、幾度と無く脳裏に焼き付けられた、端正で流麗な顔。
先ほどまでは溢れんばかりの焦燥に彩られていたその顔には、今は何の表情も無い。無表情で、無機質。
「――――――――」
かつてさらさらと流れ、惚れ惚れするほど美しく輝いていた長髪は、丁度首のところの長さでばっさりと切断されて。血に濡れて。肉片にまみれて、綺麗な薄紫色は穢れてしまっていた。
「―――――――――」
己の顔が引き攣っているのが理解る。
筋肉が硬直しているのが理解る。
だから、ライダーに声をかけたいのに、口が動いてくれない。
咆哮とともに大剣がライダー目掛けて振るわれるのを、俺は何も出来ず見ている事しか出来なかった。
殺されると、判っていながら、何も。
だから、せめて短い間だったけどありがとう、とか、さようなら、とか。それよりももっと気の利いた台詞の
一つでも吐かないといけないのに、恐怖や後悔や絶望に染まった体も、顔も、口も、頭も。何も動かない。働かない。機能しない。させない。俺に、そんなことをする権利は無い。恐怖――か、どうかは判らないけれど、とにかく、その瞬間、ライダーを助けられなかった俺に、そんなことをして良いはずがない。
――――それに、もう。
「――――ア、」
俺の頭蓋にめり込んでくる、頭蓋より大きな、鏃。
――――俺はもうすぐ、ライダーとは反対に。
「――――、 ――――」
顔、の左半分が、抉られた。
その、半分だけに、なった、視界、と、思考。
最、後に、見たのは、消えてい、く、ライダー、の、あ
「――――――――っ」
――――頭部を潰されて、胴体だけになって
た
ま
むけ
ごめ
な
――――死ぬの、だから
|
Nobody
can say that the selection is a mistake.
Nobody
can scorn him.
It
does not criticize.
However,
the shooting star fell to the ground and he also died.
Only
it is a fact.
So
this is Fate. given to him. by your's
衛宮士郎/ライダールート BAD END
<<