Paradise Lost Gothic、
/ マイナス ――――誰かの未来、または胸の裡、ときどき過去
赤毛のショートカットの女の子は、母親に良く似た笑顔で笑った。 「いつもね、お母さんが言ってるの。むかつく、って。お父さんにちかよらないで、って。お父さんもね、お母さんのこと、好きなのよ。だからね、むだなんだって。 そんなものは無理な相談、と。 「け、ふっ」 女が力を込める。咽喉を押しつぶすように、クビをねじ切るように、力を込める。女の子は苦悶の表情で息を吐く。顔が蒼褪める。血の気がひいていく。 「…………」 女が気がついたとき、女の子はぐったりとして動かなくなっていた。 「晴香! 晴香! 晴香ぁっ!」 近づいてくるのは、憎い声? それとも、愛しい声? 全然分からないから、女は哂った。気が狂ったように、哂い続けた。
|