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( ゚∀゚)彡 アチャ娘さんの憂鬱って漢字で書ける?
 ⊂彡


 1 ランサーの悲哀


「――おい女。テメェどこの英霊だ。剣を使うアーチャーなんて聞いたことがねぇ」
「女――? ハ、ランサー。君は眼がおかしいのではないか? 私の何処が女だと言うのだ」
「――はぁ? テメェこそ何抜かしてやがる。その顔に髪型に体型に声――どこからどう見ても女だろうが」
「――――」

 思うところがあったのか、アーチャーはそこで口を噤む。
 ランサーの言っていることは真実だ。
 俺から見ても、いや、誰が見てもアーチャーは女だろう。
 アーチャーはどうして「自分の何処が女なんだ」という言葉を口にしたのだろうか。
 
 そんなことを疑問に思っているとアーチャーはおもむろに自分の顔にぺたぺたと手を当てだした。
 輪郭や顔の部品の形を確かめるように指を動かす。
 
「――そんなこと、そんなことある訳が……」

 わなわなと細かく震えながらアーチャーが呟く。
 そんなアーチャーを見つめる俺とランサー。
 ……ついさっきまで殺し合いをしていたというのに、あたりは妙な雰囲気に包まれていた。

「――何だこのふくらみは、何だこの小さい手は……」

 呆然と呟きながら、アーチャーは次に胸に手をやって――
 瞬間、
 
「……っ!?」

 電撃に打たれたように
 くわっ、
 と眼を見開いた。  


「そら見ろ。本当にテメェはわけがわからねぇ英霊だな、ったく」
「な、何だコレは……っ!? 何故私にこのようなモノが!」

 肩を竦めたランサーを無視して、驚愕の表情を浮かべたアーチャーはワシワシと自分の胸を揉みしだく。
 揉んでは「何故だ!?」「何だ!?」「何で!?」と疑問の声を上げる。
 俺にはどうしてアーチャーがあんなに必死で焦っているのか分からない。
 だが、顔を赤くして自分で自分の胸――それも冗談みたいにデカイ――を揉みしだく美女という絵柄は……その、健全な青少年が見るには少し刺激が強すぎる。
 
「何で、何で、何で……!!!」
「…………っ!」

 かれこれ十数回胸を揉みしだいたアーチャーは今度はやおら自分の股に腕を突っ込んだ。
 反射的に視線を逸らす。
 見たい、という下劣な欲求が無いわけでは無いが、あまりにも驚き焦っているアーチャーを見ているとそんな気分になろう筈もない。
 というか「何で無いの……!?」と半泣きでわめきながら自分の股間をがしがしと摩る美人という絵柄は、その、

「きょ、きょうのところはコレくらいで勘弁しといてやる……!」

 健全な青少年どころかお兄さんが見るのにも刺激が強すぎる。
 前屈みのまま跳躍して塀を飛び越えて去っていくランサーの後ろ姿を眼で追いながら、俺は鼻血の大量出血で意識が朦朧としてきていた。

「何でなの! 何で、どうして! どうして私○○○○付いて無いの……!?」



 2 (おげろん過ぎてボツバージョン)

 鼻にティッシュで栓をし、深呼吸をして何とか気を沈めようとしていたそのときにソレは起こった。

 かれこれ一分もの間自分の股をがしがしと擦っていたアーチャーは、一旦その動きを止めると、何を思ったか

「えぇい! こうなったら直接……っ!」

 そう叫び、あろうことか――

「っ!?」

 越しまわりがスカート状になっている外套を脱ぐと、皮鎧をがばっとずり下ろし、

「っっっ!!!???」

 ――おっぴろげた。

 所謂恥部。
 所謂下腹部。
 所謂アソコ。

 ――一部の男性諸氏から「全て遠き理想郷」と呼ばれた女性のソレを、それはもう完璧に完全におっぴろげた。

「あ、あ、あ、あぁぁぁ……」

 アーチャーは呻いている。
 目に涙を一杯に溜めて、わなわなと体を小刻みに震えさして、夜風に晒されている己の股間を覗き込み凝視しながら呻いている。

「――――」

 俺はといえば完全に思考と行動を停止している。
 アーチャーの行動のあまりの突飛さと大胆さに度肝を抜かれたこともあるが、俺の前方。股間を覗き込み前屈みになったアーチャーの……が……ちょうど……

 ――引き締まって、けれど見ただけで柔らかそうな二つの丘の間。其処こそ彼の伝説の騎士王が夢に見たといわれる――

 ――そんなもの夢に見ますかっ!!!

「!?」 

 がおー!
 ゴン!
 と、金髪碧眼の少女の幻想に殴られた。

「「あ……っ」」

 どさり、と崩れ落ちる。

 アーチャーは恐らくショックで、俺は貧血と殴れられた衝撃で。

「――――」 

 どういう仕組みなのか……殴られた箇所がじんじんと痛む。っていうかあの美少女は誰だ。

「はは、ははは……」

 アーチャーの乾いた笑い声が聞こえてくる。
 視界に黒い部分が広まっていく。
 それに合わせて意識が薄れていく。
 このままではすぐに気を失ってしまうだろう。
 脳裏に浮かぶ――初めて見た女性のそこ。
 知らなかった。あんなにつるつるしてたんだ。それに、肌は褐色なのにそこだけは淡い桃色をしていた。
 不思議だ。
 とても不思議だ。
 少しグロテスクだというのに、嫌悪感は湧いてこない。

 ――そうして、意識が落ちる。

 ……その直前、門の隙間から覗き見をしているランサーの姿が見えたような気がした。

 あれ? おまえ、なんで槍二本持ってるんだ…………