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 間桐桜のサーヴァント、騎英の英霊・ライダー。

 ゴルゴン三姉妹の末っ子。地面まで届かんと伸びる紫の綺麗な髪、水晶
のような瞳、スラリとした体躯。絶世の美貌を持つエーゲ海の女神。
 海神ポセイドンに見初められたが故に、女神アテナとポセイドンの妻ア
ンフィトリテの呪いを受け、醜い顔と無数の蛇の髪を持つ怪物にされてし
まったゴルゴンの怪物。

 冬木での第五回聖杯戦争において召喚され、それを勝ち抜き、現在魔眼
殺しの眼鏡をかけて間桐桜と共に衛宮家に逗留中。
 家事の手伝いや乗馬のトレーナーのアルバイトなどをしながら、日々、
虎視眈々とマスターの想い人である衛宮士郎の子種を狙う。
 
 そんな彼女の属性はずばり――――

 ”ドジっ娘”である。





 
 ドジっ娘ライダー・幼児退行するの巻





 
 事の始まりはライダーが久方ぶりにロンドンから帰省した凛と共に桜の
魔術鍛錬の講師をしていたときだ。
 鍛錬も一息つき、皆で茶を飲んで休憩中。
 茶菓子を取りに行った桜を見送り、うーん、と背筋を伸ばしたライダー
の目に留まったソレ。
 散らばった様々な魔術道具の中に一つ、異彩を放つ用途不明の四角形。

「凛、これは何ですか?」

 持ち上げ、くるくると回しながらライダーが凛に問う。
 掌に収まるほどの大きさの小箱。宝石箱の類にも見えなくは無いが、装
飾は申し訳程度で華美さの欠片も無い。
 その代わり――ではないのだが、蓋も含めた全体に魔術文字がびっしり
と書き込まれている。 

「なに? ライダー。……あぁそれね、向こうで知り合った製薬が得意な
魔術師から貰った物よ」
「ほう。それではこの中には薬が入っているのですか」
「んー……それはちょっと違うわね。なんて言えばいいかしら……その箱
は浦島太郎に出てくる玉手箱みたいなもので、開けると煙が噴出して、そ
の煙に焙られると老化ならぬ幼児退行を起こしてしまうって代物なのよ」

 凛は茶を飲むのを止め、髪の毛をふぁさっとかきあげて続ける。
 優雅である。

「ま、そうは言っても私にくれたヤツも実際に試したことないから本当に
幼児退行を起こすかどうかはわからないんだけど、面白そうだから貰った
のよ。
 ……言っとくけど、絶対に開けちゃだめよ」
「はい。わかっています」 

 観察するのを止め、ライダーが凛に小箱を手渡そうとしたその瞬間――

 ――ドジっ子スキル(レベルEX)発動!

くしゅん、とクシャミをした勢いそのままにライダーの掌から落下する
小箱。
 慌てて受け止めようとするが間一髪間に合わず、地面に落ちた衝撃で開
いた蓋から噴出した煙を顔面に浴びたライダーは、
   
「…………ふぇ、お姉ちゃん……だれ?」

 見事に幼児退行してしまいました。やったね。

◇◇◇ 

「うぇぇぇぇん! びぇぇぇぇん!!」
「え………………!?」

 頭の中が滅茶苦茶だ。
 
 ……何故だ。
 ……何故なんだ。
 買い物から帰ってきて玄関の扉を開けようとしたその瞬間、家の中から誰
かの泣声が聞こえてきた。
 いや、誰かって言うかあの声はアイツの声に違いないんだけど、アイツ…
…ライダーが泣声をあげるなんて想像できないというか在り得ないだろって
いうか。

 でも、
 
「うわぁぁぁぁん――――!!!」

 この声はライダーの声に違いない。
 泣いている所為でいつもの穏やかさや冷静さは無いけれど、泣いていても
変わらない透き通るような声色は、声の主が彼女だということを証明してい
る。

 ……いや、でも……なあ。

 あのライダーが?
 泣く?
 何で?
 さっぱりわからない。
 とは言うものの、何時までも玄関先で突っ立ってる訳にもいかない。とも
かく家に入ろう。

 がらがらがら、扉を開けて家の中に入る。
 靴を脱ぎながら「ただいま」と声を掛けるが、桜もロンドンから帰ってき
ている遠坂の、案の定ライダーの返事も無い。
 その代わりに聞こえてくるのは家の中にはいって俄然感じる迫力が増した
ライダーのものらしき泣声と、

「あぁぁ五月蝿い! 桜! ライダーはアンタのサーヴァントでしょ! 何
とかしなさい!」
「な―――! 元はと言えば姉さんが持ってきた箱の所為じゃ無いですか!」

 ヒステリックな遠坂と桜の怒声だった。
 
 今のの台詞から予測するに、泣いているのは本当にライダーらしい。
 加えて二人は良い感じにてんぱっている。
 遠坂はともかく、ここで生活し始めてから桜があそこまで声を荒げるなん
て初めてではないだろうか。
 
「うぇぇっ、えぇっ、うぇぇぇぇ――――!!!」
「ああほら、泣かないでライダー。良い子だから泣き止んでちょうだい」
「うぇぇぇ――――!」
「何がそんなに悲しいの? 私に言ってみてごらんなさい」
「あぁぁぁ――――!」
「「あー! もう何なの(どうすればいいの)よ!!!」」
 
 考え事をしている間も泣声は止まらない。
 何とか二人が宥めようとしているが、効果は無いみたいだ。
 さすがにこれは尋常な事態では無い。
 ――急がなければ……!
 荷物を廊下に置いて居間の扉を開ける。
 
「みんな、いったいどう――――――!?」 
 
 その光景を目にして、思わず声を失った。
 覚悟していたとはいえ、今目の前に広がる光景を何と表現すれば良いかさ
えわからない。ともかくそれぐらい居間は凄い惨状だった。

「士郎! いいところに帰ってきたわ、アンタもこっちに来て手伝って!」
「先輩! その……ライダーが、ライダーが!」
「びぇぇぇぇん!!!」

 まず目に入ったのはボコボコになった壁とテーブル。
 鈍器で強打されたようにへこんでいる。
 次に怒声の主遠坂と桜。
 二人とも呼吸は荒く、頬が蒸気している。髪の毛と衣服はは乱れ。疲労し
ているのか、心なしか顔は座礁しているようだ。額に汗も浮かんでいる。
 
 そしてライダー。
 手足をじたばたさせながら泣き喚いている。
 綺麗な目と顔は真っ赤になっている。その目からぽろぽろと溢れ出す涙。
下がっている眉根。
 ……その表情は母親とはぐれて迷子になった子供そのもので、見ている
と心が痛くなる。

「遠坂……桜、えーと、これはいったいどういうことなんだ? その、何
でライダーが」
「それが――!」

 遠坂から説明を受ける。
 要約すると答えは酷くシンプル。
 遠坂がロンドンから持ち帰った魔術道具の煙を浴びてでライダーが幼児
退行した。原因はいつもの遠坂のうっかりではなくライダーのドジの所為
であるらしい。
 
「うわぁぁぁぁ! あぁぁぁぁん!」 
「事情は分かったけど、それでどうしてライダーが泣いてるんだ――!?」

 ……それにしても凄まじい泣きっぷりだ。
 遠坂とはかなり近づいているのに声が聞き取りくい。必然的に声は大き
くなる。

「それがわかんなくて私も桜もさっきから困ってるの! だから士郎、ア
ンタちょっと聞いてみて――!」
「わかった――!」

 遠坂に言われてライダーに近づく。
 っつーか泣いてる女の人――今は女の子なんだけど、とにかく苦手とい
うかどう相手していいかわからない。
 しかしそんなこと言っていられない。
 ライダーの顔はとても悲しそうで――俺は、大切な人がそんな顔をする
なんて――耐えられない。
 意を決す。
 ライダーをこれ以上不安にさせないように優しい声で尋ねる。

「ライダー……? いったい何がそんなに悲しいんだ?」

 俺が問うてもライダーは泣いたままだったけれど、何度か呼びかけてい
るうちに落ち着いてくれたのか、ライダーは泣き声をあげるのを止めて俺
の方を向いてくれた。

「……えっぐ、えぐ…………すん」

 ……イカン。
 遠坂から幼児退行してるから今の俺たちの記憶は無くなっていると聞か
されていたが、怯え全開で俺を見やるライダーの顔は殺人的なまでに可愛
い。可愛すぎる。っつーかこのまま抱きしめて頭を撫で撫でしてあげたい
なあ……ライダーの髪の毛良い匂いがするんだよなあ……。

「……ラ、イダー」

 無意識にライダーの方へふらふらと近づいて行く俺……って俺の馬鹿!
何考えてるんだ! さっきの決意はどこいった!
 精神統一精神統一。平静を保て。ライダーも桜も遠坂も困ってるんだ。
ここは俺がしっかりしなくちゃいけない。
 
 パン、と頬を叩いて気合を入れる。
 ……うむ、落ち着いた。よし。

「うっ……うぅ……おにいちゃん……だれ?」

 どんがらがっしゃーん

 心の中に響いたその音は、つい数瞬前に固めた決意がボロボロと崩れ去
る音だった。もう完膚無きまでに崩れて塵となって散りました。

 あぁもう! やっぱり可愛いなあちくしょう!
 ぎゅわっ! と思わず抱きしめたくなるが、桜と遠坂の視線が怖いので
耐えることにする。

「俺はね、この家に住んでる衛宮士郎って言うんだ」
「……シ、ロー?」

 ああ……可愛い可愛い可愛いなあ! 
 イントネーションが少し違うけどそんなの気にならない。寧ろこっちの
方が良い、いろんな意味で。
 ぎゅわっ! と思わず抱きしめたくなるが、桜と遠坂の視線に篭る殺意
が3割増しになったので耐えることにする。

「そう、シロー。……えーと、ライダー……ちゃん。何で泣いてたの? 
何か悲しいことがあった?」

 膨れ上がる欲望を恐怖心と僅かに残った理性で押さえつけて尋ねる。

 「ちゃん」と言った瞬間に桜と遠坂の視線に篭る殺意が5割に増したの
は俺の気のせいだと思いたい。
 
「うぅ……だって、ぜんぜんしらないところだし、あそこのおねえちゃん
はこわいし……」

 ライダーの答えを聞いて俺が振り向くと、射殺さんばかりに視線に篭っ
ていた殺意は霧散して、ばつの悪そうな顔で何か言いたさげに口を歪める
遠坂と俯いて小さくなる桜。どうやらというか完璧に身に覚えがあるらし
い。
 ……はぁ。
 二人とも小さい――この場合ちょっと特殊なケースなんだけど、とにか
く子供には優しいと思ってたんだけどなあ。
 俺の中で遠坂株と桜株が緩やかに低下。別に抱きしめるのを邪魔した殺
意への仕返しではない。断じて。

「……ここはさっきも言ったとおり俺の家だから心配しなくていい。……
えーと、あの二人も普段は優しい人だから怖がらなくても大丈夫だよ」
「……ほんと?」
「ああ、ほんとだ。……君の二人のお姉ちゃんはちょっと遠くに出かけて
て居ないんだけれどね」

 確かステンノとエウリュアレだったか。ライダーが指摘しないところを
見ると間違っていないらしい。姉二人が居ないと聞かされたライダーは悲
しそうな顔になってまた泣き出しそうになったが、不安の苗は早めに刈り
取った方が良い。俺がライダーの頭をぽん、ぽんと叩いて、

「大丈夫。二人とも元気だし、君のことよろしく頼むって俺に」

 ゆっくり、落ち着かせるように撫でながら笑顔で言う。
 それで安心してくれたのか。
 ライダーはずずっと鼻を吸い、袖口で涙を拭いて――

「えへへ……シローはやさしいね」

 ――そう言って、満面の笑みを浮かべた。

「――――――――」

 それは本当に綺麗で無垢な、なんの打算も上辺も無い、心からの笑顔。
 いつものライダーが浮かべる涼しげな笑顔――微笑とはまったく違う
その顔全体を喜びの色に染めたその笑顔を見て、不思議なことに今まで
膨れ上がっていた可愛いとか抱きしめたいとか思う欲望は沸いてこず。
 ただ、暫くの間、呼吸さえも忘れてその笑顔に見とれていた。
 
「……シロー?」
「え―――? あぁ、ごめん。どうかした?」

 ライダーの声で我に返る。
 後ろから感じる気配から、見とれていたのは遠坂も桜も同じだったこ
とに気がついた。無理も無い。かの海神ポセイドンがこの笑顔を見たか
どうかは判らないが、それでも神ですら魅了するほどの美しさが今のラ
イダーには在った――否、在る、のだ。
 
「あ、あのね」

 なにやら恥ずかしそうにもじもじと指を見合わせるライダー。
 
 ……イカン。また抱きしめたくなってきた。
 精神が子供のライダーは無意識にやっているんだろうけれど、身体は
大人のまんまだから一つ一つの仕草が滅茶苦茶新鮮で、その、何度も言
うように大変可愛いのだ。
 
「あのね、わたし、……おなか、空いた」

 くるるる、とお腹の虫を鳴らせながら……ってことは無いが、恥かし
そうに言うライダー。
 それが微笑ましくて、思わず自分の顔がほころぶのがわかる。
 
「そうか、わかった。すぐ用意するからちょっと待っててくれ」
「うん!」

 時計を見遣れば短足の針はもうすぐ6の字を指そうとしている。夕飯
の支度をするには些か遅い時間だ。どうやらライダーのことで俺も桜も
遠坂も夕食のことを失念していたらしい。

 元気な笑顔で大きく頷くライダーにひらひらと手を振りながら、廊下
に置いてある買い物袋を取りに向かう。途中、桜と遠坂に「飯は俺が用
意するからライダーの相手頼む」と目で合図。遠坂が物凄い嫌そうな顔
をしたが無視。桜は大きく頷いてくれた。
 
 買い物袋を手に台所へ。今日使わない材料を冷蔵庫にしまいながらメ
ニューを考える。

(……そうだな、今日はライダーの好物を作ることにしよう)

 ライダーは魚が好きだ。丁度秋刀魚が買ってある。今日はこれの塩焼
きをメインにしよう。本来なら土蔵から七輪を出してきてで焼きたいと
ころだが時間が掛かる。ライダーが腹空かせてるようなので却下。

 ……って、あれ? サーヴァントって腹減るんだっけ?
 確かライダーは「食事は本来必要ありません」とかなんとか言ってい
たような気が……。
 
「………………」
 
 ……まあいいか。
 幼児退行なんでとんでもないことが起こってるんだ。腹が減るなんて
小さなこと気にしてもしょうがない。そもそも腹ってのは減るのが普通
なんだし。早いとこ作ってしまおう。

 ◇◇◇

 まあ予想していなかったと言えば嘘に為るけれど、いざ本番となると
やはりどうしたらいいか分らなくなるというか、照れるというか。とに
かく非常に困る。

 はぁ、と心の中で溜息を吐くと、その陰気な雰囲気がライダーに伝わ
ったのか、心配するような声で尋ねてきた。

「シロー? どうかしたの」
「あ――いや、なんでもないよ。その、旨いか?」
「うんっ!」 

 華のような笑顔。
 一点の曇りの無いその幸福の表情に、昏い思考は一気に吹き飛ばされ
る。見ているだけのこちらの方も幸せになりそうだ。
 ずっと見ていたい衝動に掻き立てられる。けれど、

「ライダーちゃん……その、どいてくれないかなぁ……?」

 膝の上に座るのは勘弁して欲しい。
 
 何故か分らないが、どうやら俺はライダーに懐かれたようで。それは
喜ばしいことだし、こんな状態になってしまったライダーが俺も心配な
ので、面倒を見るという面でも非常にやり易いのだけれど、幾らなんで
もこれはまずい。
 何がまずいって、ライダーは精神は幼児のそれだけれど、身体は大人
のままなわけで、正座した俺の上に、俺と同じ方向を向いて座るライダ
ーのお尻の柔らかさとか、髪の毛の良い匂いとか、その髪の毛の間から
覗く横顔やうなじから薫る色っぽさとか、時たま休憩するときに預けて
くる体の暖かさの全てが凶悪に俺の煩悩を刺激してくるのだ。
 そして今のように俺に喋りかけるときは、腰を入れ替えて、俺に正対
して抱きつくようにしてくる。腰を入れ替える時にお尻が大事な部分を
擦るうえに、背の高いライダーが膝の上に座って正対するとそのたわわ
な胸が俺の目線の位置にあるわけで、もうこのまま――――してしまい
そうなほどまずかった。
 それでも俺が何とかギリギリで踏ん張ってられるのは、食事を始めて
からこのかたずーっと感じる、二つのとんでもない殺意のおかげだった
りするのが嬉し悲しかった。ちくしょう。

「うー……」

 口を尖らせ、悲しそうにその流麗な眉根を下げて抗議の目を向けてく
るライダー。
 あぁ、その表情滅茶苦茶可愛い…………じゃなくて、

「……どうしても、駄目かな?」

 ライダーをどうにかしてしまいそうなのは我慢できるのだけれど、こ
のままじゃ俺は飯が食えないのだ。ときどきライダーが振り向いて食べ
させてくれるけど、それだけじゃ足りないって言うか、流石に恥ずかし
過ぎた。俺があーんと口を開ける度に二人の殺気が増大するし。

「うぅぅ……」

 さらに眉根を下げて、抗議の目を向けてくるライダー。目尻にはうっ
すら涙が滲んでいる。
 あぁ、やっぱり可愛いなあ…………じゃなくて、そんな顔をされたら
これ以上強く言える訳無いじゃないか。

(それに……)

 何だかんだ言って、こうなってしまったライダーの世話をするのは、
日ごろ此方が世話になっている恩返しにもなるし、何よりライダーが俺
を頼ってくれるのが嬉しかった。

「……しょうがないな。いいよ、座ってても。……あと、もうどいてっ
て言わないから、その、そんな顔しないでくれ」

 なるべく優しく、お願いするようにそう言うと。

「えへへー、ありがとう」

 ライダーは、見る者の呼吸すらも止めてしまう、あの必殺の笑顔を浮
かべて、

「やっぱりシローは優しいね」

 だから大好きー。と言うと、呼吸を忘れてしまった俺に止めをさすよ
うに、ぎゅっと俺を抱きしめた。途端、ガタンと盛大な音を立てて立ち
上がる遠坂と桜。

「ちょっ! ライダー、あんた何やってんの!」
「らららライダーっ! 先輩から離れなさいっ!」 
 
 遠坂と桜がヒステリックに叫んでる。
 でもそんなことどうでもいい。
 俺の脳みそは沸騰してどうにかなってしまった。
 だって、いい匂い。凄くいい匂いがするんだ。
 柔らかい。すごく柔らかいものに顔が包まれてるんだ。
 
「いやー!」
「な――――、なんですって……! 私にも責任の一端があると思って
黙っていれば……! 子供になったからって何しても許されるわけじゃ
ないわよ!」
「そうです! さっきからそんな羨ましい……じゃなくて、先輩に迷惑
でしょう、離れなさいライダー!」
「いやぁっ!」

 抱きしめる力が強くなった。
 それと同時に絶対に離すまいと足を腰に絡み付けてくる。
 あ、あ、そんなに密着すると……!

 
「駄々こねてないでさっさと離れなさい!」
「ライダー、言う事聞かないと私怒りますよ!」
「うぅ…………いやだもん……シローはいいって言ったもん」

 まわされた腕に更に力が篭る。
 俺の頭をがしっと胸に抱え込むようにかき抱いた。
 か、顔が、む、胸のたたた谷間に挟み込まれて――――

「……っ! そうよ士郎も士郎よ。あんたも黙って抱きしめてられない
で何とか言いなさい!」
「そうです先輩! 抱きしめて欲しいんだったら私がいつでもしてあげ
ますから!」

「ちょっと士郎! 聞いてるのあんた!?」
「先輩、先輩からもライダーに言ってください!」

「…………士郎?」
「…………先輩?」
「…………シロー?」


「……ライダー、怒らないからちょっと士郎を離してくれる?」
「う、うん」


「士郎、しっかりしなさい!」
「先輩! 大丈夫ですか!?」
「シロー、どうかしたの?」

 ――――息が、できなかった。ぐへ。
 


 ここで打ち切り。

 理由:思ったより萌えなかったから(重要)

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